公共政策研究室

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枝野ビジョン

『枝野ビジョン支え合う日本 (文春新書 2021)

 

おおよそ、穏当な見解と思います。以下、いくつか気になる点があったので記しておきます。

 

・日本の1500年の歴史から説き起こすのはよいが、それが保守とどう関係あるのか。

・支えあいなどの言葉は、現在では、共助社会として、小さな政府にちかい使われ方をしています。本書を読む限り、第三の道や機能的政府に近く、適切な財政支出をすべしとの議論ですから、わざわざ、支えあいなどという用語を使う必要はないと思います。

基礎自治体が重要、さらに、平成の合併以前の基礎自治体レベルのコミュニティが重要と説きます。それは、税の負担と受益の関係、参加民主主義の観点からです。それであれば、近隣政府をデザインしているのでしょうか。そのあたりは何も触れられていません。

・直間比率の見直しを説きます。そうすると、法人税率アップ、所得の累進課税の強化となります。このあたりは、経済界、富裕層には受け入れられません。そこをどのように突破するのでしょうか。

・ビジョンを実現しようとすると、かなりのコンフリクトが発生することは火を見るよりも明らかです。それをあえて打破して実現するのは、「革新」ではないでしょうか。

・ビジョンが「江田ビジョン」のように、挫折しないことを切に希望します。