公共政策研究室

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映画「オッペンハイマー」を見て感じたこと

 アカデミー賞で多くの部門で受賞した作品であり、唯一の被爆国である日本人の立場から必要性にかられて見た映画。

 まずは、家で見るより、映画館で見た方が爆音やその振動などがすごいので良いと思った。また、多くの部分が戦後、彼がソ連のスパイの嫌疑をかけられた聴聞会の内容で、登場人物もかなり多いので、かなり難解だ。また、3時間と長いが、それでも多くのことをはしょっているので、予備知識が必要だ。

 原爆の父「オッペンハイマー」は、ユダヤ人であり、ドイツより早く原爆を開発すること、また、その使用に積極的であったが、その惨状を見て、さらなる威力のある水爆の開発に反対する。原題は、「American Prometheus: The Triumph and Tragedy of J. Robert Oppenheimer」であるから、その方が意味が分かりやすい。

 日本への原爆投下の映像がない点について賛否があるが、日本人なら分かっても外国人には多少の映像がないと理解できないのではないかと感じた(映画館では泣いている人も結構おられたが)。

 戦争関連映画ではあるが、戦闘シーンもなく、戦争に動員された科学者の苦悩を描いた作品として、ドイツの暗号「エニグマ」を解読したイギリスの天才数学者アラン・チューリングを描いた「イミテーション・ゲーム」(2014年)(https://eiga.com/movie/80082/)とも若干類似点のある映画でもあった。

 原爆投下は終戦を早めかどうかについての論争はあるが、日本は最後までソ連の仲介による和平を、藁をもすがる思いで画策していたことからすると、8月9日のソ連の参戦が降伏の決断には決定打だったと考えるべきだろう。原爆の投下が何十万ものアメリカ人将兵の命を救ったから必要悪だったというのがアメリカでの定説であり、今もそれを信じているアメリカ人は多い。しかしながら、近年になって進歩的なアメリカ人からは、反省の意見も出ているという。アメリカの主張は余りに凄まじい惨状を見て後付けで正当化したものと見るべきではないか。むしろ、ソ連の侵攻前に、開発した形の違う2つのタイプの爆弾の威力を見せることによって、アジアにおけるソ連の影響力を抑止する意味が大きかったのではないか。その意味では、広島・長崎への原爆投下は日本の敗戦には、不必要なものだったという議論は説得力がある。原爆投下は明らかに戦争犯罪に値すると思うが、そのようなものを投下されるまで、ずるずると結論を先延ばしにした日本の戦争指導者の責任は重いと言わざるを得ないだろう。

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/4294970cfb5e3db079cf6042271800377734ed9d